2次元翼(翼形)の特性を求めるための既存の水槽実験においては、試験翼(3次元翼)が設置されている水槽の両側壁の境界層の影響(3次元効果)が考慮されていない。申請者は過去数年の間に「平行壁間における3次元キャビテーション翼のせん断流理論」についていくつかの論文を発表してきた。本課題研究の目的は、これらの理論を拡張・融合することによって、水槽の両側壁の境界層の影響の評価を可能にする理論的な方法を開発することである。このような目的の下に、前述の中のキャビテーション発生の無い理論について、その主流の速度分布を任意の分布に適用できる簡便解析法を提案し、乱流境界層の速度分布である7分の1乗べき法則に従うせん断流について特性解析をした(平成7年度)。次に、キャビテーションを伴う二次元翼(翼形)の特性を理論解析によって求めるために、代表的な翼形として欠円翼形、平板翼形、円弧翼形を選定し、既存の特異点解法によってこれらの翼形の特性解析を行った(平成8年度)。平成9年度においては、平成7年度に提示したキャビテーション発生の無い簡便解析法の理論をキャビテーションを伴う場合に拡張した(速報的に秋田高専研究紀要に発表)。すなわち拡張された理論式を解析的な手法と数値的な手法を融合した独自の方法(高専教育論文集に発表)で解析し、この解析法のコンピュータ・プログラムを作成した。これによる解析結果と、平成8年度に求めた2次元翼の解析結果とを比較し、最終的に、キャビテーション(超空洞)を伴う2次元翼の特性を求めるための水槽実験において従来考慮されていなかった両側壁の境界層による3次元効果を明らかにした(学内にて発表、また学会にて講演予定)。
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