研究概要 |
本研究では、熱音響冷凍機の基本的な動作メカニズムの解明、各構成要素の構造が性能に与える影響を理論的に明らかにして、熱音響冷凍機の実用化のための知見を得ることを目的としている。熱音響冷凍機には、管の両端にそれぞれ音響を発生させるためのスピーカーと、音響の振幅を増大させるための共鳴器が取り付けられている。そして、管の中にスタックと呼ばれる1〜2mm程度の間隔で積層された薄い板を挿入すると、スタックの一方端から他方端へ音響によって熱が移動する。その結果、熱が奪われる側の温度が低下し、冷凍効果を得ることができる。音響冷凍機の動作機構の解明にあたって、新たに伝達行列法による解析方法を考案し、実験によりその妥当性の検証を行った。 スタックを音波(定在波)中に置くと、その速度および温度境界層内において圧力、速度、密度振動の位相が局所的に変化する。熱が輸送される基本原理はこれらの位相変化に基づいているので、その位相変化を計算し,その結果を伝達行列の形式にまとめる手法を考案した。計算される位相変化を実験と比較することにより、シミュレーションの妥当性を検証する必要があるので,長さ約50cmの共鳴管を有する実験装置を製作した。その結果以下の知見を得た。 1 伝達行列法により導かれる圧力と流速の分布は,位相は実験結果と良く一致し,振幅は30%程度の差があることが分かった。 2 熱負荷がない条件下で温度分布を計算し実験と比較すると,両者は定性的にはよく一致した。 3 入力エネルギー,スタック長さ,スタック間距離などの熱音響冷凍機の幾何学的パラメータが冷凍機の成績係数に与える影響を計算により求めることができた。
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