研究概要 |
われわれは,平成6年度までに,電磁波(ふく射)の照射を受ける原子層がふく射のエネルギーを吸収して加熱され融解にいたる非定常相変化過程を電磁波動論的・分子動力学(MD)的に調べる第一次的な研究を行っていた.その結果,本研究において,その研究を発展させて,ミクロ系におけるふく射と相変化のダイナミックス,とりわけふく射の放射冷却と原子系の凝固の関係を調べるには,実在系における熱伝導のとり扱いを確立することが重要であることがわかった.本研究では,この問題をとり扱うことにした.ここで,実在系として基本となるのは,非等方的に欠陥を含みあるいは内部に温度分布を含む固体の原子系であり,そのような系はバルク系ではなく有限サイズの系において実現される.その研究は,非等方的に加圧され欠陥を含むようになった有限原子系における非一様的な熱エネルギーの流れに関するものであり,それは接触熱抵抗のミクロ研究につながる.そこで,固体表面間の接触熱抵抗に関するMD的アプローチとして,まず,加圧された柱体の力学的変形の非定常過程をMD的に調べた.従来のMDにおける歪み制御型の変形付加法に対して圧力制御型の方法を提案し,また印加圧力を準静的に走査する方法を提案して,弾性変形あるいは塑性変形した有限サイズの原子系のMDモデルを作ることに成功した.ついで,このような有限サイズの原子系における温度分布と熱エネルギーの流れの非定常挙動をMDの手法で調べることを試みた.マクロ系についての熱伝導方程式とFourierの熱伝導法則のミクロ有限系についての妥当性を検討し,非等方的・不連続な欠陥を含む原子系の熱力学性質と熱伝導性質を明らかにした.さらに,このような系の相変化過程のふく射・伝導複合伝熱問題を電磁波動論的・分子動力学的に明らかにすべく研究を進めている.
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