研究概要 |
本研究は今後ますます盛んになると考えられる宇宙開発において,それに伴う事故の発生,特に火災発生の時の対応策あるいは未然防止策を構築するため,重力のほとんど無い,それゆえ,自然対流効果の顕れない宇宙空間での着火〜火災発生〜火災伝ぱ挙動を数値計算で予測することを目的とする.本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.固相表面加熱→固相熱分解反応→気相着火→火災伝ぱ→固相への熱のフィードバックという履歴をシミュレートするコードを開発した. 2.気相側気体燃焼反応には一般的な総括一段反応式を採用したが,固相(紙)の熱分解反応に対しては3種類の化学反応を仮定した.後者の反応速度式に関しては,他の研究者が得ている実験結果や理論研究と整合性を持たせるため,常温〜数百℃の範囲で計算上反応がほとんど起こらないように修正・改善した. 3.燃焼反応に関する計算コード開発に際して,燃焼反応領域での急激な熱発生による解の不安定化を避けるためタイムスプリット法を計算コードに組み込むとともに,計算時間の急増を避けるためコードのベクトル化,最適化ならびにマルチグリッド法の併用を可能な限り行った. 4.酸素濃度,加熱熱流束,横風(例えば宇宙船内のベンチレーションによる流れ)流速などの初期条件,境界条件が,無重力下での気相着火から火災伝ぱに至る一連の燃焼現象に与える影響を調べ,宇宙空間での発火条件,火災の形状とその広がり方についての知見を得た.特に,着火とその後の火災伝ぱは酸素濃度に大きく依存しており,着火が固相上空で起こること,ならびに着火後,火災は地球上と異なり球核状に空間を伝ぱするが,燃焼反応の最も盛んな領域は固相直上の予混合燃焼領域にあることなどが分かった.
|