研究概要 |
中低位熱エネルギーの高効率利用を目的としたランキンサイクルやヒートポンプサイクルの作動冷媒として用いられている従来の有機系冷媒に熱伝導率や潜熱など熱的性質の優れた水を付加した混合蒸気は,凝縮過程において両者が相互に混ざり合わずかつ大きな表面張力差を有するため伝熱面の性状によらず有機物の膜状と水の滴状からなる膜・滴混在凝縮を実現する。巨視的には伝熱面上に水が滴状に付着しそのまわりを有機物が膜状に流下する。特に付着水滴は,蒸気の直接凝縮,有機液膜上に浮遊する水の微小的の流れ込み,さらに近接する付着水滴同士の合体により成長しある大きさになると離脱流下する。その掃除面には残留痕をもとに初生滴が生成し再び成長-離脱の周期滴な動挙動が繰り返され,離脱頻度が著しい条件下では有機物と水が線状に別れて流下する筋流が現れる。従ってこのような膜・滴混在凝縮においては,伝熱面が短いものほど平均熱伝達率が高くなる膜状凝縮の特性と伝熱面が短いほど掃除効果が十分に発揮されない滴状凝縮の相反する両特性を有する。即ちその熱伝達率は離脱滴の掃除作用による伝熱促進効果と液膜厚さの増加に伴う熱伝達率の低下割合のバランスで決定され,その臨界は膜・滴混在から筋流への遷移と関係する。従って低温度差においては伝熱面が長いほど効果的であるが,高温度差の範囲では筋流への遷移が早いため伝熱面長さが短いものほど効果的であると考えられる。しかし熱交換器の小型化を目的に伝熱面寸法を微小化した場合このような伝熱特性に適用限界が生じることが予想される。本研究は以上の観点から,共沸組成にある二成分不溶性混合蒸気中に置かれた伝熱面の重力方向および水平方向の伝熱面寸法の影響について実験的・理論的に追求し,その結果さらに詳細に検討する必要があるものの膜・滴混在凝縮の伝熱特性に及ぼす伝熱面の微小化の影響に関する知見が得られた。
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