研究概要 |
飛び移り型の非線形ばね特性をもつ動吸振器について,その制振特性を理論的および実験的に明らかにした.得られた結果を要約すると以下の通りである. 1.理論的解析 対称3次式で表される安定平衡点を二つもつ飛び移り型非線形ばねと粘性ダンパーからなる1自由度系でダンパモデルを考えた. (1)不減衰1自由度系に付加してインパクト自由振動応答を数値解析した.その結果,線形ダンパより制振効果を高めることができる系があること,質量比が大きいほど線形ダンパと較べて衝撃第1波の抑制効果が大きいことを明らかにした. (2)周期外力による強制振動応答においては,線形系のPQ理論による最適化系より効果のある解があるが,その程度はそれほど大きくはないことがわかった.また,質量比が大きくなると効果のあるパラメータ範囲が広がりロバスト性が向上すること,カオス発生がみられたが,必ずしも大きな制振効果には結びつかないことがわかった. 2.実験的解析 一端をガタをもって固定された板ばねを両側から複数枚重ね合わせ,中央に質量を取り付けた後たわませた構造の飛び移り型ダンパを作成し,片持はりを利用した1自由度系に付加して実験をおこなった.なお,減衰量を任意には設定できなかったため,最適解の確認までには至らなかった (1)インパクト自由振動応答を求めた結果,モデルによる数値解析と概略同等な応答を得て,制振効果を確認した. (2)不つりあいを用いた強制実験でもダンパの制振効果を確認することができた.振動抑制効果はかなりロバスト性があり,また効果が現れている領域でカオス振動が起こっていることを確認した. 以上により本ダンパは主に衝撃を受ける場合の自由振動抑制に有効なダンパであるといえる.なお,実用的にはダンパ構造の検討がさらに必要であると思われる.
|