研究概要 |
低電圧で駆動する静電マイクロアクチュエータを開発し,太陽電池によるエネルギ供給が可能であることを実験により確認した.開発した静電マイクロアクチュエータの構造は,複数のカンチレバ-が直列に接続された形をしている.カンチレバ-一本の寸法は,長さ450μm,幅10μm,厚さ1.5μm程度であり,材質はアルミニウムとクロムである.一つ一つのカンチレバ-の変位は微小なものであるが,それを複数重ねることで全体として245μm程度の大きな変位を獲得することができた.また,必要な駆動電圧は一本のカンチレバ-を弾性変形させるのに必要な電圧に相当し、その電圧を12V程度まで低減することができた.これにより,CMOS論理デバイスからの出力を直接アクチュエータの電極に接続することで駆動できるようになった.すなわち,従来の静電アクチュエータに必要な電圧増幅回路や,電磁力駆動型モータに必要な電流増幅回路などの特別な駆動回路が不要であり,これにより静電マイクロアクチュエータとCMOS論理回路が集積されたマイクロシステムを,非常に簡単で微小なものにすることができる.さらに,この静電マイクロアクチュエータに太陽電池でエネルギを供給することを試みた.17.8mm×10.8mmの市販の太陽電池を5枚直列に接続することによって,アクチュエータの駆動に成功した.現在の最先端の技術を用いれば,この太陽電池を2mm×3mm程の寸法にサイズダウンすることが可能であることを算定し,アクチュエータ,CMOS論理回路,太陽電池を集積することによって,数ミリサイズのマイクロシステムが開発可能であることを示した.
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