研究概要 |
知能ロッボトには,触覚センサの装着が有効である.これまでに開発された種々の触覚センサの内,光導波形触覚センサは柔軟性を有するシリコンゴムをセンサ材料として用いることができるため,対象物体との馴染み性が高く,耐衝撃性にも優れている.このセンサの基本原理は,光導波路として機能するアクリル板と接触変形材料としてのゴムシートを接触させ,アクリル板の側面から入射された光が接触部で散乱反射することによって得られる接触面画像をCCDカメラで撮像して,接触力に比例して生じる接触面積を検出するものである. この光導波形触覚センサは,ゴムシートのテクスチャ形状や光導波路の形状を複雑化することによって,圧力分布を別の高次の情報へと変換できる特長を有している.著者は,この点に着目してゴムシートの検出面側に多数の円柱状触子を配列し,一つの円柱状触子に対して裏面に2×2個の円錐状触子を配列し,4個の円錐状触子の接触面積の大小関係から,三軸力を求める三軸触覚センサを開発した. 本研究では,三軸触覚センサをさらに発展させて,三軸力だけでなく硬さなどの高次の情報が直接得られる触覚センサの開発を目的としている.提案した触覚センサは従来形とは逆に,ゴムシート側を単純な平面とし,アクリル板側にピラミッド形の突起をアレイ状に配置し,さらにピラミッド突起の2×2個を一枚の正方形ゴムシートで覆い,それぞれの隣接するゴムシートが段差をもつように配置する.すなわちピラミッド突起に直接接触するシート(凸シート)と,負荷時のみ接触するシート(凹シート)とを市松模様状に配列する.この構成により,センサに作用する三軸力は一組のピラミッド突起から観測される4つの接触面積の大小関係から,また対象物体の硬さは凸シートと凹シートにおける接触面積の大小関係からそれぞれ測定できる. 以上の機能を定量的に把握するために,有限要素法による接触問題のシミュレーションを行った.また,20×20のピラミッドをもつアクリル板と,凸シートと凹シートを10×10の市松模様状に配列したゴムシートを用いてセンサを構成し,垂直力と水平力を合成して印加できる荷重負荷装置を用いて実験を行った.計算結果と実験結果から,原理の妥当性と感度予測に対するシミュレーションの有効性を確認できた.
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