研究概要 |
超伝導電力機器のクエンチ電流値は,超伝導線が短尺で直線状態にある場合の値より大きく低下している.その原因の一つとして,機器の自己磁界に着目し,超伝導線が経験する自己被回の方向および大きさについて検討した. ・超伝導流器の試作器を対象として,ビオサバ-ルの法則による計算および磁束密度計による測定を行った.両者において得られた磁束密度はその大きさおよび方向の両面でほぼ一致し,巻線のほとんどの部分で超伝導線に対して垂直方向の磁界となるが,層と層とのわたりの部分では長さ方向の磁界が印加されることが分かった. ・機器の自己磁界が超伝導線のクエンチ電流値に及ぼす影響を検討するために,使用している超伝導線の短尺直線状態(150mm)でのクエンチ電流値の磁界依存性を実測した.通電電流に対して同一方向,逆方向および垂直方向に磁界を印加してクエンチ電流値を測定した. ・同一方向磁界の場合,クエンチ電流値は印加磁束密度0.1T当たり100Aの割合で低下している.垂直方向の場合もクエンチ電流値は低下しているが,その低下割合は0.1T当たり40Aであり,同一方向よりも小さい.また,逆方向の場合は,印加磁界によらずほぼ一定である. ・自己磁界分布解析から得られた超伝導限流器の負荷直線と超伝導撚線のクエンチ電流の磁界依存性とを比較したところ,超伝導撚線に長さ方向の磁界がかかわるわたりの部分において,クエンチ電流値が最も低下しており,そこが弱点となってクエンチが発生する可能性を指摘できた.
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