研究概要 |
本研究は,申請者が考案している磁束オブザ-バに基づく誘導電動機の滑り周波数制御形速度センサレスベクトル制御を,DSP制御によるIGBTインバータで実現し,制御器の設計法を確立して,各種の運転状態においても優れた定常および過渡特性を有するシステムとして完成させることであり,このために電圧を正確に制御するPWM方式の開発も合わせて行うことを目的としている。これまでの成果をまとめると以下の様になる。 1.実験装置の製作:IGBTを用いたPWMインバータ制御の実験システムを試作し,高速演算が可能なDSPを内蔵したハードウェアの製作とC言語による通信プログラム及びアセンブリ言語による滑り周波数制御形センサレスベクトル制御のプログラムを開発した。また, IGBTの電圧降下やデットタイムを補償し,電圧を正確に制御するPWMインバータ制御法も開発した。 2.理論と実験の比較:考案した磁束オブザ-バによる誘導電動機センサレスベクトル制御の定常および過渡特性試験を行った。これらの結果は理論解析の結果とも良く一致しており,提案した解析モデルによるシステム設計が可能であることを立証できた。 3.従来方式との比較:磁束軸の漏れインダクタンスを省く方式を提案し,この方式が従来方式より安定であることが理論および実験により明らかとなった。 4.パラメータ同定:励磁電流に交流分を重畳することで,一次抵抗のみならず二次抵抗も同定する方法を考案した。これによりロバストなセンサレスベクトル制御が達成できる見通しを得た。 5.センサレスベクトル制御の別法の提案:q軸磁束を用い,一次抵抗同定も同時に行うことができるセンサレスベクトル制御や一次抵抗を必要としない瞬時無効電力に基づくセンサレスベクトル制御も考案し,理論と実験によりその有効性を検証した。
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