研究概要 |
本研究は,誘導電動機の速度センサレスベクトル制御の低速域での不安定現象を磁束センサを用いて根本的に解決することである。誘導電動機のヨ-ク磁束の特性を明らかにするため,2.2kw,60Hz,4極の汎用誘導電動機のヨ-ク部に直径5mm深さ15mmの磁束検出用穴をあけ,この中の磁束を検出した。磁束センサは,平成7年度で明確にした磁束センサの基本仕様をもとに300℃まで使用可能な零磁界形磁束センサを試作して使用した。 平成8年度の実験を引継ぎ次の事が明確になった。まず,磁束センサの位置を変化させた場合にヨ-ク内の円周方向磁束の大きさを測定した。この結果,誘導電動機の固定子スロットより離れるに従って磁束の大きさは双曲線関数的に減衰することが分かった。また,磁束センサを軸方向に回転させた場合には,基本波および第3調波とも磁束センサの回転角の余弦に比例する事が分かった。これらの実験結果は,理論解析結果とほぼ一致し磁束センサの位置や回転角による検出磁束の変動を理論的に計算できることが分かった。以上より誘導電動機の磁束検出が,平成8年度で明らかにした第3調波が若干残留することを除いて本研究の方式で十分可能であることが分かった。 第3調波磁束の影響を明らかにするため,磁束センサ付き速度センサレスベクトル制御のコンピュータシミュレーションを行った。その結果,第3調波磁束により若干のトルクリップルが発生するが,低速領域で安定運転できる事が分かった。また,第3調波磁束の影響を小さくするには2次電流ループのゲインを下げることが有効であることが分かった。
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