研究概要 |
本学衛星通信研究施設内のCS系実験局において、過去10年間にわたってほぼ連続的に記録された通信衛星CS-3ビ-コン波(19.45GHz)の、降雨時における減衰、及び交差偏波識別度(XPD)劣化の測定データを用い、それらの累積確率や秒単位における変動特性の解析を詳しく行うとともに、降雨事象毎の平均値等の分布を多数の事例について求めた。また、1988年から同時に受信して継続して測定しているKu帯放送衛星(BS)電波の減衰量と降雨事象毎に比較検討を行った。その結果両者の周波数間の減衰比は、雨滴粒径分布の影響を大きく受けることが今回雨滴粒径を地上において多数自動的に直接測定することから確認された。さらに両周波数帯の減衰量の比は、CS-3ビ-コン波(Ka帯)の主偏波(右旋)に対する交差偏波(左旋)成分の相対位相差と密接な関係があり、雨滴粒径分布が両方に共通して与える効果が確認された。そして、降雨減衰量の比は2.5〜3.8、交差偏波位相は-150°〜-100°の範囲に主に分布することが示され、これらの値はは3種類の代表的な雨滴粒径分布(Joss-drizzle, Marshall-Palmer, Joss-thunderstorm)によりほぼ予測可能な範囲にあることが示された。一方、CS-3ビ-コン波の交差偏波識別度(XPD)に関しては、過去100例余りの降雨事象毎に得られた降雨減衰とXPD劣化量の平均値から雨滴による効果と氷晶による効果の特徴が指摘され、特に氷晶の効果が顕著な層状性降雨の場合について雨滴の効果を除去して氷晶効果のみ抽出した結果、それらの影響が降雨強度に依らずほぼ一定であることが明らかにされた。
|