研究概要 |
物理現象のシミュレーション結果や本来不可視なものを可視化するための種々の可視化法が必要とされている.著者らは既に,スカラ量やベクトル量のステレオ可視化を行うための等高線表示,複数任意断面の擬似カラー分布表示や矢線・流線によるベクトル表示法を開発し,その有用性を示してきた.本年度の科学研究費において,この可視化システムをより有用なものにするために,次ぎの可視化法を開発した. 1.空間中に分布するベクトル量が把握しやすい表示法:ベクトルを観察する場合,その大きさと方向,軌跡を同時に観察可能な方法が望まれる.これを実現するのが流線のステレオ擬似カラー表示である.この方法では,流線上の物理量の大きさは把握できるが,流線のない空間ではその大きさは把握できない.そこで,空間のベクトル量をボリュームデータとして扱うボリュームレンダリングを用いて,これに流線表示法を併用する新しい可視化法を開発した.この表示法により空間全体のベクトル量の分布状況と方向・軌跡が同時に観察できるようになった. ソレノイダル条件を満足する磁束線・渦電流線の算出法の開発:従来,流線は仮想粒子追跡法によって求められていた.この方法では,流線算出に時間がかかり,誤差が累積するため流線が元の出発点に帰らない問題がある.これを解決する方法として,辺有限要素解析の結果を用いた解析的な算出法を開発した.算出法が解析的であるから算出時間が極めて短い.さらに,理論的にはソレノイダル条件を満足する精度の高い方法である.この方法の開発により,インタラクティブ性の高い可視化システムが実現可能になった. 高速表示のためのデータ構造の開発:計算結果ばかりでなく実験結果も含めたあらゆる物理データの可視化を行うために,汎用性の高いデータ構造として,3次元格子を用いたデータ構造を開発した。
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