研究概要 |
本研究では,生体組織の音速や音波伝搬減衰などの音響特性量を指標として病変の進行を定量的にとらえる定量診断技術を発展させるため,生体組織構造の不均一を考慮した2次元超音波減衰分布の高精度計測法を開発することを目的とした。従来,生体組織は複雑で,生体組織の音響特性から病変の定量診断を行うのはかなりむずかしいと考えられてきた。しかし,本研究では生体組織の不均一性を考慮した生体組織用の高精度な音響特性測定法を開発した。 本方法では,生体中を伝搬する複数経路の音波を分離し,それぞれの音波を用いて音速・減衰の値を求めることで安定な測定が可能となる。また,周波数として数MHz帯から数十MHz帯の超音波を用いることで,音波の散乱成分と,熱に変換される吸収との区別を明確にし,高精度減衰特性計測法を開発した。モデル試料を用いて計測精度を検討したところ,音速では5m/s以下,減衰では十数%以下の精度での計測ができることがわかった。 人心筋組織を用いた予備的な測定によれば,正常な生体組織の音速・減衰は極めて安定で,さらに病変による物理的変化と音速値,減衰値の間には明確な関係があることが明らかになった。本計測法により,生体組織の物理的・化学的構造と音波減衰特性の関係について,実験的,理論的に検討でき,今後病変診断に結びつく基礎的知見を得ることが可能となる。
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