研究概要 |
この研究では,電波の持つベクトル性(偏波)を最大限に利用した2次元合成開口FM-CW映像レーダの実現を目標とした。XY方向にアンテナを走査できる2次元走査FM-CWレーダ装置を作成し,合成開口処理法を使って,ターゲットの像を取得した。また,レーダポーラリメトリの概念を導入し,直交偏波を組み合わせた合成開口後の映像ピクセルを偏波散乱行列に対応させ,いかにコントラストの高い偏波イメージングが達成できるかを理論的,実験的に検討した。従来,レーダポーラリメトリの理論は単一周波数を基本に構築されているが, FM-CWレーダは広い周波数を使う広帯域レーダである。そのため,如何にFM-CWレーダにレーダポーラリメトリの理論を組み込むことができるかが最大の問題点であった。ここではFM-CWレーダの掃引周波数帯域の中心周波数での複素反射係数値を散乱行列の要素に対応させた。そして,偏波による物体の散乱特性の違いを偏波イメージングに役立てるために偏波基底変換理論を詳細に調べ,任意の偏波状態でイメージングができることを確かめた。周波数帯はKuバンド, Xバンドで,ターゲットは平板,コーナーリフレクター,ワイヤ,プラスティック製の飛行機モデル等である。そのレーダにより室内での物体イメージングを行なった結果,電力,位相イメージともFM-CWレーダが完全なFull-Polarimetricシステムとして動作することが確認でき,画期的な偏波イメージングレーダを構築することができた。この成果は既に学会の論文,シンポジューム,講演に発表した。今後,物体形状の認識,埋没物体への応用などさらなる発展が期待できる。
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