研究概要 |
本研究では,対象作業に応じてロボットハンドのフィンガのいずれかがヒトのおや指の役割を担うことにより、広い動作範囲において他のフィンガやパーム(ロボットの掌)との対向性を実現できるハンドシステムを構築することを目的とした.ハンドの設計の段階で,教示作業効率の観点からは人間形に劣るが,より多様な形状の物体が把持できるとの判断から,ハンドの形態を非人間(対称)形とすることに決定した.さらに,対向性の成立範囲の大小が親フィンガの性能を左右することから,フィンガ表面の被覆に柔軟性を与え,物体と面接触できる機能がとりわけ重要であると考察した.しかし面接触をすると,物体の形状によっては,その特徴点と力ベクトルの作用線との間に明確な対応が得られない場合がしばしば発生し,物体を安定に把持するための力制御則の適用が困難になる.そこで,接触力ベクトルが検出可能な小形の3軸力覚センサ素子を弾性被覆に分布状に配置し,それらの情報を基に被覆の変形を求めて物体の定位を行い,把持安定性を評価することにした.加えて,物体との接触状態の変化をより詳細にモニタできるように,各センサ素子に滑り振動覚機能も与えることにした. まず,ハードウェアとしては,3軸力覚および振動覚を有する動的触覚センサ素子を試作し,柔軟な被覆に分布装備するまでを最終的に実現した.高信頼な素子の開発が容易でなく,センシングノイズが顕在化したため,それらのセンサ情報を直接利用できるまでには至らなかったが,ソフトウェア上は,ノイズの少ないセンサ信号を仮定してさらに研究を進めた.すなわち,センサ信号に基づいて,有限要素法を利用した定位アルゴリズムを得,また,ポテンシャル関数から得られるヘシアン行列の正定性を調べることにより,外乱に対する物体把持の安定性を解析するアルゴリズムを求めた.そして,これらの有用性を実時間性とともに評価した。
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