鉄筋コンクリート構造物の早期劣化の問題が指摘されて久しいが、厳しい塩分腐食環境下におかれた鉄筋コンクリート構造物では比較的短い期間に何らかの形で鉄筋腐食に伴う劣化・変状が現われてくるのが通常である。鉄筋コンクリート構造物の維持管理や補修法を決定するための検査法には、コンクリート中の鉄筋とかぶりコンクリートの状況を現場にてリアルタイムに把握できることが重要であり、また将来にわたる鉄筋腐食の進行を初期段階にて精度良く予測するには、かぶりコンクリートの塩化物イオン、酸素の透過性および鉄筋に対する保護機能を総合的に判断できる検査法が望まれている。このような観点より、 (1)海洋環境下に暴露した鉄筋埋設コンクリート試験体の腐食状況および塩分浸透量を調べることにより、かぶりコンクリートの塩化物イオン透過性と内部鉄筋の腐食との関係について明らかにした。 (2)交流インピーダンス法より求めたコンクリートの電気伝導率(比抵抗)と細孔構造との関係を詳細に調べることにより、コンクリートの電気伝導率(比抵抗)から塩化物イオンの透過性や鉄筋に対する保護機能などの性質を推定する方法の有効性について検証した。 (3)急速塩化物イオン透過性試験(AASHTO T-227)はかぶりコンクリートの品質や補修材料の性能などの評価が迅速かつ簡単にできるのが特徴であるが。本試験法によるかぶりコンクリートの鉄筋腐食に対する防食性能の評価基準は適用するコンクリートの種類によって相違すると考えられるので、各種コンクリートに対して急速塩化物イオン透過性試験と交流インビーダンス法による電気伝導率(比抵抗)の測定を実施し、両者の関係について明らかにした。 以上の結果をふまえて、かぶりコンクリートの鉄筋腐食に対する腐食機能の評価法および急速塩化物イオン透過試験の適用性についての提言を行った。
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