研究概要 |
斜張橋やニールセン橋などケーブル構造物の架設の際に利用されている振動法によるケーブル張力計測に必要なケーブルの曲げ剛性を,ケーブル張力と同時に同定する手法を拡張カルマンフィルターを用いて開発した. 振動法によるケーブル張力計測に関して、著者等は以前ケーブルのサグや曲げ剛性を考慮した実用算定式を提案した.提案式は,代数式で与えられ,計測した固有振動数より簡単に張力が算定されるので,広く利用されている.しかし、ケーブル長が短くかつケーブル張力が小さい場合には適用できないなど,適用範囲に制限を設けていた.今回,その精度を改善するため一部修正を加えるとともに,適用範囲外になっていたケーブル長が短くかつケーブル張力が小さい場合についてあらたに張力算定式を作成した. 続いて,ケーブルを1次ないし2次のモード座標で低次元化したモデルで拡張カルマンフィルターを構成した固有振動数とケーブルの曲げ剛性および張力を関係づける方程式は非線形になるが,先に提案した振動法によるケーブル張力計測法で作成した近似式を利用した.まず,同定精度の検証を数値シミュレーションにより行った.さらに,小型模型実験を実施し,実振動計測データを用いた場合の検証を行った.小型模型には,ケーブルの代用として理論曲げ剛性の明確なアルミニウム板を用いた.アルミニウム板に所定の張力を導入し,加振実験を行い,加振力および応答値の計測データを用いた同定結果を実際に導入張力や曲げ剛性と比較することにより,実測値を用いた場合の同定手法の検証を行った.測定データの分析および解析には申請のセンサーおよび計測分析用パソコンシステムを用いた.その結果,加振方法として,正弦波を用いた場合については,張力が小さい場合から大きい場合まで,張力と曲げ剛性が同時に精度よく同定できた.
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