恒久的地盤改良注入材として用いられるセメント懸濁液、セメント-粘土系注入剤、超微粒子グラウト等、懸濁液型グラウトの流動ならびに土中浸透機構を理論ならびに実験の両面より究明した。理論的検討においては、降伏応力を有する非ニュートン流体としての懸濁液型グラウトの多孔質体中における透過係数をKozeny-Carman解析により誘導し、間隙流体と透過媒体との間の基本的関係ならびに透過係数の決定方法を提示した。 実験的検討では、平成7年度は各配合条件下のセメント懸濁液、ベントナイト、超微粒子グラウトについて回転粘度計による粘性試験より流動曲線を求めた結果、いずれも降伏応力を有するビンガム塑性流体として流動特性を近似的に表現し得るとの結論を得、配合条件と流動パラメータとの関係を定量的に評価し得た。次に、これら懸濁液型グラウトの浸透抵抗と流動特性との基本的関係を確認するため、1次元の室内浸透実験を通じて浸透開始および停止時の限界圧力勾配ならびに浸透時の平均流速の変化を測定した結果、グラウトの降伏応力と限界圧力勾配、粘性係数と透過係数との間には理論的検討で示された関係と同様の関係が認められた。 平成8年度は以上の結果をふまえ、グラウチング時の地盤中の圧力分布と注入範囲の定量的評価を目的とし、定圧注入下における浸透フロントの発達と浸透域の圧力勾配に関する実験的検討を行った結果、グラウトの流動ならびに浸透特性をもとに懸濁液型グラウトの地盤中への注入の可否ならびに最大可能な浸透距離を推定し得るとの結論を得た。以上の研究結果より、従来その機構がほとんど解明されていなかった懸濁液型グラウトによる地盤改良において、今後の注入工法の合理的な設計・施工計画の展開に対し有効な基礎資料を提供し得た。
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