冬季に茨城沿岸へ来襲する長周期性高波浪を対象に、その波源域および発生条件を調べるために必要となる波浪推算の精度向上を行ったものである。その内容は、波浪推算モデルの基本的枠組みについては最新の世代モデルと位置づけられている波の周波数間非線形エネルギー伝達輸送を考慮したRESIOモデル(Resio他、1892)を用い、その中で推算精度に最も関わる周波数のスペクトル形状についての改良である。 まず、世界の波浪推算モデルを比較したswampテストをResioモデルでの実施と日本近海の8ケースの気象擾乱における波浪追算から、風から波へのエネルギー供給、非線形輸送そして破波によるエネルギー減衰の3つのバランスにより形成される平衡スペクトル形状について検討を行い、形状係数の再評価をした。 つぎに、平衡形状係数の推定可能な波浪条件の範囲を、現地の観測データを整理することから、うねり性である長周期の波浪まで適用できるように拡張した。この改良は、風波からうねり性波浪に遷移する時、高周波成分エネルギーが平衡状態を保ちながら減衰するメカニズムを取り組んだものである。 そして、これら改良を取り入れたモデルの推算精度を確認するために、1991年2月中旬に茨城沿岸へ来襲した周期15秒で波高5mにおよぶ異常長周期高波浪の追算を行った。その結果、常陸那珂沖で有義波高と有義波周期の経時変化について、追算値は改良前より観測値を良く再現していた。またさらに、波浪エネルギーの詳細な再現を検討するために、エネルギーの周波数・方向分布を示す方向スペクトルについて、いわき沖の観測値との比較も行い、改良により良好な結果が得られることも明かにした。
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