研究概要 |
水文量の評価に関わる時間・空間スケールを扱った国内外の研究を収集整理した結果をもとに,水文過程のうちでも代表的かつ重要な陸面・大気系の水熱フラックスに関係する土壌水分量および蒸発散量,および降雨に対する流出応答に直接関係する地形とそのモデル化についてのスケールの影響について系統的検討を行った。 前者に関しては,表層土壌体積含水率および物理特性としての乾燥密度について広範な現地調査と解析を行い,それらの諸量の空間的な分布特性を明らかにすると共に,様々の地表面条件にある領域下で蒸発散量の空間的な分布とその変動量を調べた.さらに,バルク法とエネルギー収支式を基本に,NOAAデータによる地表面温度情報と,GPV(Grid Point Value)データによる気象値を組み合わせて広域の蒸発散量を求め,スケールの効果を考察した. 後者については,国土数値情報により作成される擬河道網に関し,データメッシュ間隔を順次増大させて地形をスケールアップすることの妥当性,およびスケールアップに伴い地形特性や流出応答特性がどのように変わるかについて調べた.検討では擬河道任意地点における任意降雨に対応するために新たに開発した“全域表面流出モデル"を用い,流出モデルパラメータの流域要素スケールの依存性について議論した.特に流出到達時間に注目し、異なる降雨強度ものとで,250m,500mメッシュをそれぞれ基本とする場合での等価粗度の値を吟味した.その結果,斜面と河道のそれぞれで到達時間が等しくなるような等価粗度は降雨強度にはあまり関係せず,メッシュスケールの増大に伴って河道の粗度は若干増加させ,斜面の粗度は減少させるべきであることが定量的に明らかになった.
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