研究概要 |
1.ロードプライシングの社会的合意 自動車交通問題の深刻度を考慮して大阪都市圏をケーススタディに設定し、社会的合意の検討を行った。その結果、ロードプライシングの政策内容を提示する際にあわせて賦課金の使途を明示すると、賛成率が75%まで上昇し、パッケージアプローチの有効性が示された。また住民アンケート調査よりロードプライシングの賛否意識と環境重視の意識との関連性を構造モデル化した。その結果、環境の意識が高まるほど、ロードプライシングの合意度が高まることが明らかとなった。 2.ロードプライシング実施時の自動車交通量の予測 ロードプライシングの代替案を規制地域,賦課金額,規制対象車種を変化させて作成し,四段階推定法に基づいて自動車交通量の予測を行った。分担交通量予測に関しては、所要時間、賦課金額、通勤距離等を説明要因として非集計ロジットモデルを通勤・業務目的別に構築し、平成2年度PT調査データを用いてゾーン毎の転換率を適用することでロードプライシング実施後の交通量を算出した。 3.ロードプライシングの効果の算出 先の自動車交通量予測を用いてロードプライシングの効果を推定した。その結果、賦課金の上昇に応じて収入が増え、窒素酸化物削減量も大きくなることが分かった。また、業務車両を規制対象から除くと収益は大きく減るが窒素酸化物削減量はあまり変化しない。これは、業務車両はロードプライシング実施によっても公共交通機関への転換率が低いためと考えられるが、窒素酸化物排出量に応じた負担とするために一般車よりも高い賦課金を課した場合には両者の負担を500円とした場合と窒素酸化物削減量が近い値となることが分かった。 公共交通整備の財源確保の観点から収入の増大をはかるには全車種を対象にすべきであり、大気汚染改善の観点からは、汚染物質排出レベルに応じた賦課金体系が必要である。
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