研究概要 |
日本の公共福祉施設の多くは,高齢者や障害者のための福祉交通サービスとして,専用の車両を保有して送迎サービスを提供している。しかし,その運行形態は試行錯誤の段階にあり,全国的な運行実態がまだ明らかにされていない。この研究では,送迎サービスの現状と課題をマクロに考察した。 日本における送迎サービスは,1977年頃から本格的に実施され始めた。現在では公共福祉施設の72%が送迎車両を保有している。送迎需要は量的には増加してきており,質的には広域化・多様化してきている。しかし,運行効率は高くはない。1運行あたりの乗客数はわずか約5人にとどまっているし,19%もの福祉施設は乗客数データを記録さえしていない実状にある。運行効率の改善が当面の一つの課題であろう。 福祉施設の一部は送迎サービスを民間会社に委託している。民間委託には二つのメリットがある。第1はコスト意識を高揚する契機になりうること,第二は運行経験のない福祉施設でも送迎サービスを導入しやすいことである。しかし半面,次のような課題を抱えている。すなわち,第一は専門会社の質を担保する仕組みが法的に確立されていないこと,第二は運行委託料を積算する方法が確立されていないことである。 運行委託料の積算は熟練を要す作業である。なぜならば,運行システムがかなり複雑なためである。本研究では,委託料を簡便に計算する一方法を提案した。この方法は委託契約時に役立つであろうと思われる。
|