研究概要 |
本研究の成果をまとめると次のようである. HPLC用の機器を固定層吸着実験用に用い,粉末活性炭を充填した微小カラムの破過曲線から,吸着過程の相以則に基づいて実吸着過程の進行を迅速評価することを試みた.この方法によれば,吸着の動力学式と吸着平衡式から誘導される無次元数を一致させることによって大規模な装置とほぼ相似な破過曲線を極短時間に少量の試料から得ることができる.フミン質の吸着除去性に関してはマイクロカラムとパイロットカラムは相似な破過曲線を得た.しかし,シマジンとアシュラムの吸着除去性に関する相似則は成立しないことが示された. フミン質の共存下で微量有害成分の平衡吸着関係や吸着速度がどのように変化するかを,新しい活性炭とフミン質と吸着平衡に達した活性炭を用いて検討し,(1)フミン質の存在下で微量有害成分の吸着性は低下するが,フミン質の吸着は有害成分より影響を受けない.(2)フミン質が吸着することによって,微量有害成分の吸着速度は著しく低下することがあきらかとなった. 様々なタイプの農薬のフミン質共存下における固定層吸着特性をマイクロカラム法を用いて検討し,水溶解度が高く親水的な農薬ほど活性炭吸着性は低く,活性炭吸着性が低い農薬ほど,フミン質が共存することによる吸着性の低下の度合が大きいことがあきらかとなった. フミン質を除去している活性炭固定床に農薬が間欠的流入する場合の除去特性をマイクロカラム法を用いて検討した.その結果,(1)フミン質を吸着した活性炭固定床に間欠的に流入した農薬の濃度の固定床深さ方向の減衰を1次反応型で定式化した.(2)除去率を決定する1次反応係数は活性炭に対するフミン質の吸着量の関数となり,フミン質の吸着量が増加するに従って間欠流入する農薬の除去率は減少する.(3)水溶解度が高い農薬ほど1次反応係数は小さく,除去率は低い.このことは,琵琶湖水と木曽川表流水を原水としてUF膜ろ過後に固定層活性炭吸着処理を後置したGACパイロットカラム実験においても検証された. 様々な操作条件のRSSCTを用いてシマジンとアシュラムの吸着除去性に及ぼすフミン質吸着量の影響を検討した結果,シマジンとアシュラムの流出率は、あるSVと粒径を基準としてフミン質吸着量の関数として整理しうることが示した.
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