研究概要 |
生物学的硝化および脱窒反応と電気化学的反応を組み合わせた新たな微生物固定電極を用いるアンモニア性窒素含有廃水の単一反応槽での硝化・脱窒同時処理特性と操作・設計の指針に関する検討を行い以下の知見を得た. 1.活性汚泥を種汚泥として培養した硝化菌群を陽極となる電極表面に付着固定した硝化菌固定化微生物電極に通電することにより,アンモニア性窒素が硝酸性窒素に硝化された.電流値を増大することにより硝化速度は向上したが,電流密度が0.15mA/cm^2を越えると低下傾向がみられ,最適電流密度操作条件の存在が示唆された. 2.陰極に脱窒菌固定化電極を用い,陽極に硝化菌固定化電極を用いてアンモニア性窒素含有水中に浸漬して通電を行うことにより,陽極に固定化した硝化菌によるアンモニア性窒素の硝化と生成硝酸性窒素の陰極での脱窒菌による窒素ガスへの脱窒が単一槽内で同時的に進行した.硝化反応は,陽極において生成酸素により進行し,脱窒反応は,陰極から生成する水素を脱窒菌が電子供与体として利用して進行した.電流値の増大により,硝化と脱窒は促進されるが,陰・陽極それぞれに最適電流密度操作条件が存在することが示唆された.このことは,本法を用いる場合に装置内の陰極および陽極の面積比率を考慮して設計する必要があることを示している. 3.液本体の溶存酸素濃度は,硝化・脱窒をバランスよく高速に進行させるための重要な因子であることが示された.しかしながら,本法による処理では,液本体の溶存酸素濃度が高く好気的な条件下でも通電により硝化反応が促進されるとともに電解生成水素が脱窒菌生物膜内に供給されることによる脱窒の進行が確認された. 4.本法の実廃水処理への適用性について,接触曝気槽内に固定化微生物電極を浸漬して通電したところ,硝化および脱窒が同時的に促進されて窒素除去率が向上し,さらにBOD成分の分解も促進され,有効性が示された.
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