研究概要 |
表層地質が地震動の特性に大きく影響し,地震動災害が限られた特定の地域に集中する現象をしばしば経験してきた.1995年兵庫県南部地震において生じた震度7(激震)の地域(震災の帯)は,神戸市須磨区から西宮市にかけて長さ約20km,幅1kmで帯状に広がっている.その帯状の地域では木造家屋の倒壊率のみならず,RC建築や鉄骨系建物などの非木造建物の被害率も当然高い.いわゆる「震災の帯」は表層の地盤特性の差異に起因しているとは考え難く,より深い地質構造の特性を反映していると考えられる.以上の観点から,本研究では基盤境界の形状が3次元的に変化する不整形地盤の強震動を理論的に予測し,このような不整形地盤に立地するわが国の中枢都市の地震防災,並びに地震被害軽減のために資する基礎的資料を作成することを目的とする. 3次元不整形堆積地盤の地震動を境界要素法により理論解析している.本研究では半無限弾性地盤の3次元グリーン関数をスーパーコンピュータにより精度よく計算したものを用いているので,弾性地盤の自由表面の応力零の境界条件を自動的に満足している.従って,硬質地盤と軟質地盤の地層境界面に関する境界要素で境界値問題を定式化できる.本法の妥当性を検証するために,Sanchez-Sesma et al. (1989)による波動関数展開による半球形堆積盆地の調和平面SH波による地動応答結果を本法による結果と比較し,両者のよく一致していることを確認している.次に,わが国の中枢都市域で典型的にみられる不整形堆積地盤モデルを設定し,3次元応力場として地震波動をSH波,P波,SV波,レイリー波などの各種平面波動による地動応答や,及び点震源による地動応答を評価している.地動応答に及ぼす地層境界の形状,地層インピーダンス比,入力地震波動の種別,および,不整形地盤を伝播する表面波等の諸要因の影響を詳しく吟味している.
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