研究概要 |
本研究は横波超音波を用いてフレッシュから硬化後に到るまでのコンクリートの諸物性を評価する方法,即ちコンクリートの全材齢力学モデルの確立を目的としている。得られた成果を以下に示す。 1.粘弾性ねじり要素を用いて有限要素解析を行い,出力波形や伝播速度等,実験で得られた超音波の伝播性状を精度良く再現出来た。またフレッシュ時から硬化後までのコンクリートの各材齢に応じてモデル分割の大きさを変えることにより,精度の良い出力波形が得られること,即ち各材齢における最適なモデル寸法が存在することを示し,その経時変化を算定した。 2.粗骨材が伝達波形に及ぼす影響に関して,出力波形のパワースペクトルにより検討を行った結果,粗骨材最大寸法が伝達波形に与える影響を定量化することにより,粗骨材の分離の検出など建築施工現場レベルで応用できることを示した。また,各測定材齢における最適周波数について確率密度スペクトルにより検討を行い,各材齢で測定に用いる周波数の最適値を算定した。これにより実験的に得られた最適周波数を定量的に検証できた。 3.タイムスケールに依存しない物質常数を有する慣性粘弾性レオロジーモデルを用いて,各周波数領域におけるモデルの挙動を解析し,これと測定結果とを比較することにより,コンクリートの全材齢力学モデルの確立に関する検討を行った。その結果,コンクリートの各材齢において,測定周波数に依存しない,即ち変形速度に依存しないせん断弾性係数及びせん断粘性係数等の物性常数が算定できることを示した。また逆に物質常数自体にタイムスケール依存性が無くともモデルの特性として依存性が生じていることを明らかにした。得られた結果を用いることにより,クリープのような長期的なタイムスケールで生じる現象から,衝撃力等を受けた場合の動的挙動のように短いタイムスケールで生じる現象まで,一つの力学モデルでコンクリートの挙動が評価できる可能性を示した。
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