研究概要 |
本研究は,テクノポリス指定や広島大学の統合移転など地域環境の変容の著しい東広島市を対象に実施した各種調査結果の分析から,個人特性を考慮した環境評価モデルを提案し,その妥当性の検証を行ったものである。 はじめに,東広島市における環境変容の過程について,現在から過去10年位までを目途に,文献・資料等を収集・整理し社会的指標から概括するとともに,有識者に対する面接調査から意識的な変容についても把握した。 次に,既に実施して東広島市に新たに転入してきた大学生に対するパネル調査についてデータ解析を進め,行動範囲やみどりの認識場所の分布を白地図に記入させた結果から,時間経過による両者の変化傾向を明示した。また,生活環境評価,みどりの認識・評価に関して意識構造を把握した上で共分散構造分析を適用し,個別評価が総合評価を規定し,両者に個人の価値観が影響を及ぼすという想定で,それぞれ環境評価モデルを作成した。 上述した調査結果を考慮して調査票を設計し,東広島市を構成する西条,八本松,高屋,志和町を対象地区として,一般住民に対する意識調査を行った。以前と現在の評価結果の比較から,各地区ごとの環境変容の特徴を示すとともに,大学生との比較から居住歴による意識構造の差異を把握した。また,生活環境,みどりの認識・評価に関する環境評価モデルを大学生と同様に作成し,地区別や都市化の程度によって詳細な検討を行った。 さらに,東広島市の地域景観とCGによる合成景観を呈示して評価を求める住民意識調査を,対象地域と回答者を同じくして実施した。伝統的な農村景観とそれに人工的な要素が付加された景観との評価構造の差異を示すとともに,景観評価についても環境評価モデルを作成し,生活環境,みどりの認識・評価の各モデルとの比較を行い,価値観による影響などの共通性から,個人特性を考慮した環境評価モデルの妥当性を確認した。
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