研究概要 |
本年度はイギリス都市計画マスタープラン策定プロセスに関し総括的考察をおこなった。 第一に,1996年末にマスタープランを全国カバーするという、91年都市計画法がめざした目標は43%という値に終った。この値をどうみるかの評価はさまざまであろうが、目標設定の無い日本に比べれば行政責任を明らかにする意味は大きい。また,43%といっても採択一歩手前の自治体もあり,また,これまでマスタープランづくりの経験のなかった市町村においても参加による都市計画マスタープランづくりにかかわった意義は大きい。 第二に,計画策定プロセスに企業や市民の関心が高まり遅延が生じている問題については、1994年協議書につづき96年・97年にもさらに具体的提案を盛り込んだ協議書が中央政府より出され,活発な議論が続いている。いまだ大改革には至っていないが既に第一ラウンドの市町村マスタープランづくりは終盤にさしかかっており,第二ラウンド国の(つまり見直しに向けての)議論へと移行しつつある。 第三に、オンブズマンやインスペクター,さらにはプランニング・エイドや法廷弁護士の果たす役割が大きいことが確認された。またこれらの役割は、プランナーや議員(地方)と相補関係にあり,全体のシステムを形づくっていることが明らかになった。 以上を総括すると、市町村マスタープランの義務づけという同時代的事象の背景には、よりシステムとして成熟しアカウンタビリティに富んだイギリス都市計画の先進性があることが明らかになった。
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