研究概要 |
本研究は,屋外空間において車イス利用者がアイカメラを頭部に装着して,手動車イスを操作しながら移動する実験をおこなったものである.実験とその結果は以下の通りである. 1.建物にアプローチするために設けられたスロープや平坦部分での車イス利用者の注視傾向について検討した.実験の結果,(1)平均注視時間では個人差は認められないが,スロープの上りでは下りや平坦部での平均注視時間より長い.上りでは移動速度が速くなれば平均注視時間は短くなる.(2)注視対象は路面など安全性に関するものが主である.(3)注視距離は平坦部の方が6m程度,スロープでは2〜3m程度であり,平坦部がスロープよりも長くなる. 2.信号待ちや移動中の注視傾向を車イス利用者と健常者について検討した.実験場所は交差点付近である.実験の結果,(1)平均注視時間では通常歩行,車椅子移動とも個人差は認められないが,移動中よりも信号待ちの方が長くなる.(2)注視対象は安全性に関するものが主である.移動中の場合は健常者と車イス利用者では異なる.信号待ちの場合は概ね同じ傾向である.(3)注視距離は移動中あるいは信号待ちのいずれの場合でも車イス利用者よりも健常者の方が長い.(4)健常者は車イス利用者より先行情報をより多く得る. 3.高齢者や身体障害者にも配慮して設計された眺望の良い登山道における注視傾向について検討するために移動実験を実施した.その結果,(1)平均注視時間や平均注視回数は空間側の影響は受けない.(2)注視対象は車イス利用者の場合は安全性に関するものが主である.健常者は周辺の快適性に関する注視対象まで拡大する.(3)注視方向は正面方向が主である.それに加えて健常者は視野が開放された方向に視線が向く.
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