研究概要 |
研究の手順として、まず近畿地方、中国四国地方の公立図書館、府県市町村史の編纂室に宛てて照会状300通を出し、約100通の有効回答があった。大半は該当資料がないということで、最新の地方史編纂でも、この種の資料がまだ十分に認知されていないことが明らかになった。ついで史料が所在するとの回答を得た20施設について、現地調査を実施した。まず江戸時代の「家数人別帳」に関しては、大阪府門真市、京都府向日市、長岡京市、城陽市、加茂町、兵庫県猪名川町などで採集することができ、ほかに地方史の史料編で活字化されたものを独自に収集した。一方、民家に関する絵図資料は明治10年代のものが多く、農家では、和歌山県かつらぎ町で11ヵ村900戸、京都府加茂町で3ヵ村300戸、京都府長岡京市で1村100戸、徳島県で1ヵ村70戸、一方、町家では、京都市で42ヵ町1,200戸、大阪市で22ヵ町800戸、大津市で6ヵ町200戸などで、合計で約3,500戸の民家の平面、建物配置などに関するデータを集積することができた。 つぎに史料の分析結果を列挙すると、農家の階層性に関しては、京都府長岡京市に、江戸前期から幕末までほぼ毎年書き上げられた史料が存在し、屋敷規模がや居住規模1村の中でどのような階層性を示し、江戸時代を通じてどのように変動してきたのか、またこれらが家族構成、持高や農業経営などとどのような相関関係があるのか、さらに建物の耐用年数や筑前・筑後の建物規模の比較とその要因などについて、新たな知見が得られている。町家の階層性と地域特性に関しては、一地域の町家の間取りや住宅設備の状況、さらに町家の集合形態の分析を行い、さらに集住形態と職住関係との関係について、一定の仮説が提示できた。今回の研究では、収集史料の偏りから、民家の階層性の地域特性に関する比較研究までは進めなかったが、今後の課題としたい。
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