研究概要 |
金属-水素系は水素エネルギー関連材料から関心が持たれている。金属界面は,水素の出入口であり,同時に反応の場である。我々は,安定な白金を試料とし,白金-水素系界面の水素の状態を独自の電気化学的手法等により調べ,水素の化学ポテンシャルや水素の拡散・脱離過程等の熱力学的諸量や各種反応過程を解析した。さらに,白金界面における水素の同位体効果を調べ,白金界面におる水素の状態を明らかにした。以下に得られた具体的な知見を示す。 1.Pt-水素系電池の起電力(EMF)の「ゆらぎ」とその温度依存性を測定した。結果をパワースペクトル法,相関関数法及び確率密度関数法により解析を行った。その結果,以下の知見を得た。(1)ゆらぎは系に固有のものである。(2)ゆらぎは金属界面における水素濃度のゆらぎに起因する。(3)パワースペクトル法および相関関数法の解析からこのゆらぎはマルコフ過程に分類される。(4)確率密度関数法の解析から,水素の吸着エネルギーを評価した。 2.この電池をショートした時の電流特性や短路回路を外した後のEMFの回復過程等の面方位依存性と温度依存性を調べ,水素の吸着・脱離等の過程の表面構造依存性の知見を得た。特に,Pt (110)-H系の温度依存性を調べたところ,転移的な振舞いが観測され,その結果を表面再構成で議論した。また,測定の再現性を図るため酵素/水素交互吸着法(仮称)を提案した。 3.白金-水素系界面における水素の同位体効果を分離係数Sの測定により調べた。質量分析計により, S値として5.0を得た。また,Sの温度依存性から界面反応の活性化エネルギーを得た。結果をBockris等の理論に従い評価し,白金-水素系の界面反応はslow recombination機構によること等を論じた。また,EMF法からは過電圧以下での情報が得られることを示唆した。 尚,結果(1)は投稿準備中,(2)は投稿中,(3)は掲載済である。
|