研究概要 |
Feを1%程度含むCu合金を時効すると,約10°以下の方位差をもつ小角粒界に,粒子直径が約200nm以下ならば,隣接結晶粒の1つと整合なγ-Fe粒子が折出する.本研究では先ず,Cu-Fe合金双結晶中の粒界上整合γ-Fe粒子の粒界すべり阻止に起因する内部応力のもとで形成されるαマルテンサイトバリアントの方位を決定した.さらに,Cu-Fe合金双結晶に〔416〕または〔001〕方向から降伏応応力より小さい引張または圧縮応力を加え,発生するバリアントを同定するとともに,内部応力によるマルテンサイト変態についての結果と合わせて検討した.得られた結果および結論は以下のように要約される. 1.転位の活動が完全に抑制された条件下で,粒界すべりに基づく内部応力によって24種類のKurdjumov-Sachsバリアントのうち特定のものが優先的に形成された. 2.同様な条件下で,77Kで外部応力(110MPa)を付加することによってγ→αマルテンサイト変態が生じた.外部応力の方向(〔001〕と 〔416〕)や向き(引張と圧縮)に応じて優先発生するバリアントは異なるものであった. 3.以上の実験結果は,応力がマルテンサイト変態時の格子形を変える変形(Bain変形)に顕著な効果を及ぼすと考えれば,合理的に説明されるものであった. 4.130nmより小さい粒子は変態しなかった.大きい粒子ほど変態しやすい傾向があった.この結果は,大きい粒子ほど核生成位置の数が多いということのみによってのみ説明することができた. 5.整合γ-Fe粒子内の内部応力(静水圧:1500MPa)と全体状変形との相互作用エネルギーは,外部応力あるいは粒界すべりによる内部応力と全形状変形とのそれより約2桁大きな値であった.これより,大きな静水圧ではなくせん断応力がマルテンサイト変態において重要であることが示唆された.
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