研究概要 |
1.凝固柱状晶材からのFCC→BCC拡散変態 FCC相で凝固してBCC相を析出しさらに室温にて母相が残存する合金としてNi-43%Cr合金を用い,これを真空溶解・金型鋳込みすることにより,0度から45度の種々の<100>傾角粒界を持つ柱状晶材を作製した.これを1573Kで均一化処理を施した後,FCC+BCC2相温度域で恒温保持しBCC相を析出させた.こられの試験片から粒界面が薄膜面に垂直になるように透過電顕試料を作製し,電顕観察により生成相のバリアントと粒界性格の関係を検討した. この結果,粒界面とFCC相{111}面のなす角度θが20度以下の粒界では,特定のバリアントが優先的に生成するのに対して,θが30度以上の粒界では特定のバリアントの優先性はなく複数のバリアントが生成することを見出した.すなわち,粒界析出物のバリアント選択は粒界面方位に強く依存することを明らかにした. 2.マルテンサイト変態の核生成サイトとして働いた結晶粒界の性格 室温以下の温度への適切な冷却により少量のラス状マルテンサイトが生成することを確認しているFe-26%Ni-2%Mn合金を用いた.さらにマルテンサイトの核生成場所として働いた結晶粒界の特定を容易にするため柱状晶組織を持つ試料を作製した.この試料をサブゼロ処理して少量のマルテンサイトを生成させ,結晶粒界が核生成サイトとして働くか否かを観察した.さらに核生成サイトとして働いた結晶粒界の粒界性格をSEM-ECP法により決定し,これよりマルテンサイト変態の核生成サイトとして働く粒界が特徴ある粒界性格を持つか否かを検討した. その結果,変態初期のマルテンサイトは全て結晶粒界から生成していた.また,マルテンサイトを生成した粒界とそうでない粒界があり,結晶粒界によって核生成サイトとしての能力の差があることが明らかとなった.マルテンサイトが生成していた粒界の特徴として,(1)粒界面方位が{100}に近いこと,(2)方位差角が10〜15度であることが挙げられた.
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