研究概要 |
電顕観察を中心とする実験は予定通り進めることができた.成果の一部は論文や会議のプロシ-ディングに活用された.研究概要は以下のようである. 1.β型Ti-Mo合金における時効ω相の形成は硬化と脆化を伴うことが知られている.時効温度で変形することにより得られた変形帯の研究によれば変形帯中のω→β'逆変態による変形帯中優先変形(加工軟化)が巨視的脆化の原因であることが分かった.過時効材では硬さが低下するのにωサイズと脆さはそのままである事実が新たに明らかとなった.2段時効を施してω→α遷移状態をつくりだし,変形すると,変形誘起針状α相の束が発生し,延性を示すようになる.その延性はβ相から直接α相を析出させた状態よりも優れている. 2.焼入れ材ではβ→{332}双晶の形成によって著しい延性を発現する.その機構は不明のままであったが,α"マルテンサイト変態を経由するものであることが原子モデルのシミュレーションから明らかにされた.{332}双晶の交叉・反応が破壊前駆体を形成する.それはplanar状のω相と予想され現在TEMで調査中である. 3.Ti-Ni合金についての引張その場電顕観察では,塑性域での変形はマルテンサイト(2次マルテンサイト)が擬弾性域で形成されたマルテンサイト(一次マルテンサイト)を基盤にして増殖していく.2次マルテンサイト同士の切り合いが破壊へと導いていくようである. 4.DV-Xα法により,種々な構造(β or β",ω,α or α")のクラスターのボンド次数を計算し,それらの比較から加工軟化を誘発する破壊前駆体の構造を推定できそうである.
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