研究概要 |
き裂進展過程でき裂周辺に形成されるプロセスゾーン(PZ)及びプロセスゾーンウェイク(PZW)の微構造を主に走査型電子顕微鏡(SEM)及び透過型電子顕微鏡(TEM)によって追究し,解析・検討した.次のような結果が得られた. 1)ホットプレスSi_3N_4焼結体(TSN-2)の室温から1573Kまでの温度範囲における3点曲げ強さと破壊靭性試験で得られた結果に基づき,プロセスゾーン(PZ)及びプロセスゾーンウェイク(PZW)からTEM観察用実物薄膜を作製して内部組織観察を行い,微構造解析を行った.その結果,室温から1073Kまでの温度範囲でのき裂進展は粒界型と粒内型が混在する混合型であるが,1473,1573Kと高温になるにつれて粒内型は減少して粒界型が増大した.特に,1573Kでは粒界損傷が顕著となり,粒界微小き裂の形成が多数観察された.転位組織はき裂分岐点やgrain bridgingと関係する少数の結晶粒内や粒界に観察された.本材の高温変形や損傷の支配機構は,粒界相の軟化とそれに付随して起こる粒界微小き裂形成であることが分かった. 2)Y_2O_3-ZrO_2系のジルコニア焼結体(TASZIC ZR-2)の3点曲げ強さと破壊靭性試験を室温,873及び1273Kの各温度で調べた.3点曲げ強さと破壊靭性値ともに試験温度上昇とともに室温値の1/3にまで減少した.破壊靭性試験後の破面から測定したX線回折強度曲線を解析結果,本材料の破面にはき裂進展に伴って正方晶から単斜晶への相変態が起こり,変態量は試験温度上昇とともに減少した.SEMによる破面形態観察結果は室温,高温とも粒界型様相を呈した.き裂周辺のSEMとTEMによる観察結果は,き裂進展に伴って形成された相変態とマイクロクラックから成る変形組織領域の存在を示した.室温での繰返し疲労のおけるき裂進展挙動についても調べた.
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