研究概要 |
遠心鋳造法により作製したAl-Al_3Ni傾斜機能材料の室温および高温でのヤング率および内部摩擦を曲げ共振法にて測定し、明らかになったことを以下に記す。 1.Al-Ni合金を現有の遠心鋳造装置にて,金属間化合物Al_3Niの傾斜した直径90mm,厚さ15mmの厚肉円筒傾斜機能材料を遠心鋳造し,この材料から長さ×幅が90mm×6mmで厚さが6,5,4,3mmの各試験片を作成した。この試験片のAl_3Niの体積分率は,6mm試験片ではAl_3Niリッチ部で45%,Alリッチ部で15%となる組成傾斜を持ち,3,4,5,6mmの各試験片のAl_3Ni平均体積分率は,それぞれ40.3,38.5,36.4,33.5%となり,各試験片厚さが厚くなると平均体積分率は小さくなる。 2.自動計測による曲げ共振法における共振周波数等の測定法を確立し,前記の試験片のヤング率及び内部摩擦を室温で計測した結果,6,5,4,3mmの各試験片について,92.8,95.2,97.0,98.6GPaの値が得られた。これらの値は著者等が提案しているAl_3Niのヤング率・187GPaとして,若島の式により計算した結果と一致した。このことからAl_3Niのヤング率は187GPaが妥当な値と考えられる。また,FGM試験片のヤング率の測定値は試験片厚さが大きくなるに従いヤング率か小さくなり,平均体積分率の減少傾向と一致した。内部摩擦については,試験片厚さか大きくなるに従い,すなわち平均体積分率が多くなるに従い,大きくなった。 3.高温におけるFGM試験片のヤング率は均質材料と同じように,温度の上昇にともない低下する。温度上昇に伴うヤング率の低下度合は,均質材料と変わらない。また,Al_3Niの体積分率が増加するとヤング率は増加する。 4.内部摩擦において純アルミニウム,アルミニウム合金及びFGMで温度依存性が認められ,温度上昇に伴い内部摩擦は大きくなる。内部摩擦の温度依存性は試験片の組成によって異なり,FGMでは均質材料より小さな温度依存性となる。また,FGMの内部摩擦はAl_3Niの体積分率が増加するに従って大きくなる。
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