| 研究概要 |
少量のTi_3Alを含むTiAl二相合金は軽量耐熱材料として近年集中的に研究されている.TiAl(γ)/Ti_3Al(α_2)二相合金は,通常の凝固状態では特殊な層状組織を形成する.この層状組織中のTiAl相には6種の異なる方位を有するドメインが存在し,γ/α_2界面の他に規則双晶境界,擬双晶境界,120°回転境界の3種のγ/γ界面が存在する.2元系およびCr, Mn, Nb, Ta, Moを添加した3元系TiAl合金について3種のγ/γ界面近傍での組成不均質を電界放出型電子銃搭載分析型高分解能電子顕微鏡を用いて極微細な電子プローブで調べ,同時にその力学特性を調査した.いかなる第3元素を添加してもエネルギーの低い規則双晶境界ではいかなる元素の偏析もなく全く組成不均質は見られないが,120°回転境界,擬双晶境界の2種の高エネルギー境界では特異な偏析挙動を伴なった組成不均質が見られた.すなわち,2元系ならびにMn, Nb添加材ではTi原子のみの偏析が見られ,Cr, Mo, Ta添加材ではTi原子のみならず当該第3元素の偏析が見られた.組成不均質は高エネルギー境界の近傍でTi_3Al相に近い組成をとり,TiAl相のc/a比を1に近ずけることにより高エネルギー境界のミスフィット歪を緩和するために起こるということが明らかとなった.層状組織を斜めに傾けて引張試験を行なうと,高エネルギーγ/γ界面に偏析を伴なうCr, Mo, Ta添加材では,他に比べて引張伸び値は高く,破断も層状組織境界と無関係に起こっており,界面の強度が増加していると考えられる.しかし,層状組織に垂直方向に引張試験を行なうと,いずれの試片でも破断は層状組織境界に平行に起こり,全く引張伸びが得られなかった.これは,Crなどを添加すると界面強度は増大するが,垂直応力に耐えるほどの界面強度の増大はないことを示唆している.
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