研究概要 |
高い飽和磁束密度と優れた軟磁気特性を有するFe-(Zr,Nb,Hf)-B系ナノ結晶合金について、粉末の固化成形による高密度のナノ結晶軟磁性バルクコアの作製を調査した。次に示す結果が得られた。 1. 高圧ガスアトマイズ法では、冷却速度不足によりアモルファス単相の粉末は作製できなかった。しかし、液体急冷法により作製したアモルファスリボンを結晶化温度以下で熱処理して脆化させると共に、それを低温(100K)で粉砕することにより、効率的にアモルファス粉末を作製することができた。 2. アモルファス粉末を出発原料として用い、その固化成形とナノ結晶化を同時に行うことにより、ホットプレス法や押出法により高密度(相対密度99.5%以上)のナノ結晶成形体を作製することができた。一方、ナノ結晶粉末を出発原料として用いる場合は、高圧力(1.5GPa)下でも相対密度90%の成形体しか得られず、ナノ結晶粉末の固化成形は高密度成形体の作製に適さないことが明らかになった。 3. Fe-(Zr,Nb,Hf)-B-M(Co,Ni,Cu,Si)系合金に対して、そのナノ結晶成形体が優れた軟磁気特性を示す合金組成を探査した。その結果、Fe-Zr-B-Ni合金において優れた軟磁気特性を有するナノ結晶成形体が得られた。この合金は、零磁歪を示すために、組成固化成形により導入された残留歪みによる軟磁気特性の劣化が抑制されたためである。密度99.9%を有するナノ結晶Fe_<88>Zr_7B_3Ni_2成形体は、1.58Tの飽和磁束密度と14A/mの保磁力を示した。また、その1kHzでの実行透磁率は2000であった。 4. ゾル・ゲル法により粉末を薄い絶縁皮膜で均一にコーテイングできることが実証された。そのカプセル化した粉末のナノ結晶成形体は、渦電流が抑制される結果、高周波域での軟磁気特性が向上した。 これらのことから、アモルファス合金粉末の固化成形はバルク状ナノ結晶軟磁性コアの作製法として有望であることが明らかになった。
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