研究概要 |
Ti-Al合金はチタンが活性金属元素であるため高温酸化時には優先的にチタンが外方に拡散しチタン酸化物の形成とボイドの生成が起こり,その結果材料の強度と耐酸化性が低下する. 本研究ではアルミナ系酸化物を主体とする保護被膜の形成を目的に,低酸素分圧下での熱処理によってTi-Al合金およびAl,Nb,Yをコーティングした試料表面上に形成させた酸化層表面およびそれらを酸素雰囲気下で酸化した試料表面をXPSにより調査した.得られた結果はつぎのとおりである. 1.各成分濃度の取り出し角依存性の測定結果から,多層酸化膜モデルを用いて,汚染層およびTi濃度の高い酸化層の有効厚さを求めた.このことからTiが優先的に酸化しAlが内部に濃化することが推測された. 2.Ti2pおよびAl2pのピーク分離を行い,TiおよびAlのそれぞれの酸化状態における組成比を求めた.また,保護被膜にはTi(II)およびAl(III)より低次の酸化状態のTiおよびAlが存在することが示唆された. 3.Yをコーティングした場合,Alが優先的に酸化され,Al酸化物中に占めるAl(III)は増大する.これに対し,Ti酸化物におけるTi(IV)の割合は減少し,Ti(II)などTiの低級酸化物の割合が増大する.Al-Y複合処理の場合これらの傾向は著しい.Nbの場合,TiAlと同様な挙動を示す. 4.酸化実験の結果,TiAlおよびAl,Al-Yをコーティングした場合,酸化被膜の剥離は起こらないことが明らかになった. 以上のように、Al-Y複合処理と低酸素分圧下熱処理との併用による表面改質はTiAl系合金の耐酸化性向上に寄与しTiAlの新たな展開が期待される.
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