研究概要 |
鉄などの構造材用金属の耐食性は,表面に存在する不働態酸化物皮膜の耐食性に大きく依存する.表面不働態皮膜の耐食能は,皮膜の溶解性,イオン伝導性などに加え,皮膜内の電子準位の位置と密度に依存すると予想される.ここでは,不働態皮膜内の不純物あるいは表面に依存する電子準位に関する情報を,光応答から調べるとともに,不働態皮膜の成長をエリプソメトリーで追跡した.チタン不働態皮膜の光学性質の皮膜の成長速度に依存して変化することが見い出された.具体的には,成長速度が大きい場合には小さな屈折率,つまり密度が粗な皮膜が生成し,成長がゆっくりの場合には密な皮膜となる.多分,皮膜の遅い脱水過程が皮膜の屈折率の大小,あるいは粗密を決めていると考察される.さらに,チタン上の流酸酸性水溶液中で生成するアノード酸化物皮膜に,Cd-Heレーザーからの紫外光を照射し,準位励起後に脱励起時に放出される蛍光を測定した.なお,蛍光測定には,既設のラマン分光光度計を用いた.測定分光セルの形態に一部問題があり,種々の改良を加えた.チタン不働態皮膜を5Vでアノード酸化生成した皮膜からは,可視光領域でのかすかな蛍光が見い出される.蛍光があまりに微弱なので,まだ充分な定量なんされていないが,積算時間を稼ぐ工夫を現在加えている.蛍光のピーク位置は700-800nm領域であり,多分,表面準位を経由した脱励起過程からの発光と推定できる.
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