研究概要 |
本申請者(本間)が先に行なった「極高真空用材料の高度化に関する開発研究」の成果として、新しい表面改質法である、ステンレス鋼の表面に六方晶-BNを配向析出させる処理法は、表面からのガス放出率の低減をもたらすだけではなく、放出されるガス分圧の制御にもとづく“真空の室"の制御をも可能にし、ベ-キングの不要な表面の実現を可能にする。そこで本研究では、この表面の吸着不活性特性を利用するとともに、内部からの溶解気体原子(水素など)の拡散、放出へのバリヤ-ともなるBN層の最適析出条件を見出すことを目的として、研究を行なった。とくに、表面析出プロセスを、超平滑表面の平滑度および加工変質層の評価・制御と結びつけて解析する点に学術的特色がある。つぎの成果が得られた。 1.BN析出のような表面付加加工において、加工変質層形成の影響を解明する目的で、各種の表面平滑加工(バフ研磨(BP)、電解研磨(EP)、電解複合研磨(ECB)、フロート・ポリッシュ(EP)を施したステンレス鋼(含B,N)の各加工面表層に生じる金属組織的変質の解析を電子チヤンネリングパターン法などで行なった。加工変質層の導入が少ない表面(EP,FP)に、強く配向したBNが析出することが明らかにされた。 2.六方晶-BNの底面が表面に強く配向して析出した表面(EP,FP)は、昇温脱離法によるガス(H_2Oなど)の吸着・脱離特性の評価からガス吸着が極めて少ないことが示された。 3.新しい真空用構造材料として注目されているチタンについても、H_2Oのガス放出特性が加工変質層と強く相関していることが明らかにされた。
|