研究概要 |
本研究は、プラズマ溶射によって形成される溶射皮膜が、素地に衝突する溶滴のスプラットが順次積層することによって作られている事に着目し、これが溶射皮膜の構造及び機能の異方性に関連するものと考え、実験的に検証しようとするものである。 平成7年度と8年度の2年間の研究成果の概要は次のようである。 1.溶射粒子の衝突変形の観察:集団的に飛行する溶射粒子群より一定速度の溶射粒子を抽出する方法を考案し、その個々の粒子の衝突変形状況をSEMで観察した。 2.溶射粒子の衝突変形時間と凝固時間の推定:溶滴は素地に衝突して10^<-6>秒のオーダーで扁平に変形し、10^<-3>秒のオーダーの時間で凝固する。 3.溶射被膜の構造と硬さ測定における異方性:溶射被膜の断面の顕微鏡組織を調べ、それが層状構造を示すことから、皮膜に垂直な方向と皮膜断面に垂直な方向での硬さを調べ、前者の値が常に高いことを確認した。 4.溶射皮膜の音響伝播特性の異方性:ジルコニア溶射皮膜の面に垂直な方向の音速は3480m/s,面に平行な方向では3870m/sで,焼結体の音速7170m/sに比べ低い値を示す。有孔性と結合機構の不完全によるものと思われる。 5.溶射皮膜の変形挙動のその場観察:ジルコニア溶射試験片の側断面を研磨し顕微鏡視野内にて三点曲げ荷重を与えながら皮膜の変形をその場観察した。皮膜と素地、溶滴相互の結合力はさほど高くない。
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