研究概要 |
アーク,レーザが表面熱源であるのに対して,電子ビームはビーム加速電圧に応じた浸透深さを有する所謂,浸透熱源と考え,鉄の場合で最大0.2mmの浸透深さとなる500kV電子ビームによる溶射用80%Ni-20%Cr合金粉末を用いた溶融表面改質の実施結果を以下に示す。 1.10mm厚さのSUS304ステンレス鋼,SS400鋼及び、SK4工具鋼に厚さ0.1〜0.2mmのNi-Cr合金粉末のガスフレーム溶射を行い,500kV電子ビーム照射による溶融ビ-ドを形成した場合,溶融膜厚が0.10〜0.15mmの範囲で溶射のみに比べて気孔,未溶融などの欠陥が皆無で、粉末成分の均質固溶の新しい合金層が得られている。 合金粉末を0.2〜0.4mmの溝を刻んだSK4鋼母材上に置いた試料に対し,ビーム成形スリットを用いて均一密度分布の電子ビームを造出し,照射を行い,スパッタリングの極めて少ない溶込み深さの均一な溶融ビ-ドが形成されている。ビーム捜査速度1mm/s,ビーム出力600Wの場合,最大0.5mm厚さの合金皮膜が得られ,その成分分析でNiは35〜44%、Crは8〜10%、Feは44〜55%と粉末成分が多量に固溶している。耐食試験ではSUS310sステンレス鋼とほぼ同等の結果となっており,さらに大気中及び減圧中で施工された各種溶射の結果と比べ,電子ビーム照射は高真空中のため真空精錬の効果が十分発揮され,特に酸化,窒化の影響を受けない皮膜組織が観察されている。 以上,浸透熱源作用を有する超高電圧電子ビームを溶融表面改質適用すれば,良好な結果が得られる可能性を明らかにした.これらの成果は平成8年度秋期高温学会等で講演発表の予定である。
|