研究概要 |
まず,種々のMn濃度比の浴において,電析合金組成および電流効率に及ぼす電流密度の影響を調べた結果,いずれの組成の浴においても比較的低い電流密度域で合金組成はほとんど変化しないという特徴的な電析挙動を示した。一方,高電流密度域においてはAlおよびMn析出の限界電流密度の相対的な大きさに対応して,電流密度の増加と共に合金中のMn含有率は高Mn濃度比の浴においては増加,低Mn濃度比の浴においては減少した。また,代表的な組成の浴を用いてAlおよびAl-Mn合金の分極曲線を測定した。その結果,合金浴においては,AlあるいはMnのみの析出が認められる電位域が存在せず,AlおよびMnの析出開始電位はほぼ等しいことがわかった。すなわち,AlおよびMnの還元は同時放電においてのみ可能であり,水浴液電解に認められている誘導型共析の挙動に類似したものとなった。 次に,電析合金の表面性状,構造を調べた。AlおよびMnの析出が限界電流密度に達しない領域においては,電析物中のMn含有率の増加とともに良好な金属光沢を有する合金が得られた。そのとき,X線回折図において,合金のMn含有率の増加とともに電析物はMnが固溶したα-Alより成る結晶の回折線から次第に非晶質相によるブロードなピークへと変化した。また,透過型電子顕微鏡による微細構造の解析の結果,合金のMn含有率が増加するにしたがい,結晶質のα-Al相からの回折リングとともにブロードな回折線が現れ,非晶質相の混在が認められた。さらに,これら結晶質と非晶質相は電析物-陰極素地界面に平行な層状組織を呈するという極めて特徴的な様相を呈した。 また,Mnを約30mass^O_O含有する合金の電子線回折像は4本のブロードなリングから成り.これは主として3から5nmの粒径を有する金属間化合物Al_6Mn微結晶の集合体の存在を示す回折リングであることがわかった。
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