研究概要 |
アルコール醗酵性細菌であるZymomonas mobilisはスクロースを基質として高重合度のフルクタン(レバン)生成を触媒する糖転移酵素(フルクトシルトランスフェラーゼ,EC 2.4.1.10,FTase)を菌体外に分泌する.本酵素は,糖転移,糖鎖伸長,および分枝を伴う糖鎖重合反応を示す多機能酵素であり,既にバイオポリマー合成の触媒素子としての高い評価を得ている.また,本酵素はフルクトシル基転移受容体特異性が広く,種々のヘテロフルクトオリゴ糖の合成に適している.本研究では,タンパク質工学的手法を用いて糖転移酵素の転移機能と構造的特徴を明らかにするとともに,機能性糖質生産に適したFTaseの創製を目的とし,下記の成果を得た. 1)ランダム変異導入による機能ドメインの推定:FTase遺伝子にランダム変異を導入し,糖転移活性や基質特異性が著しく変化した変異酵素を取得した.変異酵素の酵素化学的性質を検討し,FTaseに糖鎖伸長ドメイン,基質の認識ドメイン,触媒ドメイン,分泌ドメインをそれぞれ推定した.2)推定した触媒ドメインへの部位特異的変異導入による構造・機能相関の解析と転移機能の改変:ランダム変異の結果をもとに,触媒ドメインと推定した領域内に保存される3種のアミノ酸残基Ser295,His296,His297に変異を導入して,アミノ酸置換による反応特性の変化を検討し,それぞれのアミノ酸残基の役割を明らかにした.3)改変酵素による転移糖合成への利用:ランダム変異酵素やアミノ酸置換酵素は糖転移活性や糖鎖伸長活性に野生型酵素とは異なる特性を示し,これら改変酵素を用いた低分子フルクタンやオリゴ糖合成を可能にした.
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