研究概要 |
1)4級アンモニウム塩型カチオン性界面活性剤を用いる不斉加水分解反応 ミセル界面活性剤としてセチルトリメチルアンモニウム=ブロミド(CTAB),ベシクル界面活性剤としてジテトラデシルジメチルアンモニウム=ブロミド(2C_<14>Br)を分子集合体の素材とした。活性トリペプチド触媒(Z-L-Phe-L-His-L Leu)による長鎖フェニルアラニン-p-ニトロフェニルエステル基質(D(L)-S_<12>)の不斉加水分解のイオン強度応答性を観測したところ,(a)CTABミセル系では不斉加水分解のイオン強度効果は見られず,(b)2C_<14>Brベクシル系および混合系(2C_<14>Br+CTAB)分子集合体において,比較的低いイオン強度条件([KC1]=0.02〜0.03M)において,それぞれ不斉選択性(L/D)が約70倍,および1000倍という高い立体識別機能の発現に成功した。 2)天然脂質系ハイブリッド分子集合体における不斉加水分解反応 L-a-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)をベシクル分子とし,オクタエトキシドデシルエーテル(C_<12>(EO)_8)をミセル分子とした混合系分子集合体において上記の不斉加水分解を試みた。ミセル含量の比較的少ない領域(〜30mol%)においては、リポソームを形成し,ミセル含量とともにサイズが増大するとともに不斉選択性も大きくなることが判明した。蛍光法を用いて流動性を測定すると,サイズと不斉選択性の大きなリポソームの表面および疎水殻ともに流動性は大きくなることも明らかになった。又,ミセル含量が30〜70mol%では相分離状態となることも分かった。 3)分子力場計算 コンピュータを用いた初歩的知見ではあるが,分子集合体反応場の環境を誘電率で評価し,分子力場計算および半経験的分子軌道法により分子認識機構の試みを行い、CPKモデルから予測した分子認識のメカニズムと極めて類似した結果が得られた。
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