研究概要 |
大気中粒子状物質の汚染状況を早急に改善することが極めて重要な課題と考えられることから,存在状態も含めた汚染の実態を把握するための,粒子状物質の実用的で系統的な状態分析システムを開発することを目的とした。すなわち,試料には,捕集地点での粒子状物質の特徴やその長期的変化を知るのに好都合な空調バグフィルターに捕集した試料や,短期間の汚染状況の把握に適したロ-ボリウムサンプラーによりフィルター上に捕集した試料を用いた。これらを有機溶媒,水及び希酸により系統的に抽出分離し,抽出液をICP発光分析,イオンクロマトグラフィー及びイオン選択性電極により多元素・多イオンを系統的に状態別に定量する方法を開発した。残留物については,重液分離/X線回折法により化合物の定量分析法を確立すると共に,本研究で開発した活性炭担持薄膜標準試料を用いる蛍光X線法により,簡便に多元素同時定量できた。さらに,これらの抽出・重液分離と熱分析法を組み合わせることにより,元素状炭素と不溶性有機物炭素を分別して定量できる方法を開発した。有機成分のガスクロマトグラフィー/質量分析との結合については引き続き検討課題として残ったが,これまでに確立した上記の方法を組み合わせることにより,大気粒子状物質の系統的・統合的解析が可能になると考えられる。山梨県内の各地でメンブランフィルター上に捕集した大気粒子状物質試料について,前濃縮/X線回折・蛍光X線分析法による系統的状態分析を行い地域的特徴を比較したが,今後さらに種種の実際試料に適用して,その応用性・有用性を確かめたいと考えている。
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