研究概要 |
1.目的 近年、水中に含まれる有害有機物質の除去法として、半導体光触媒を用いる処理法が研究されている。有機物と酸素が溶けた水溶液に酸化チタン(TiO_2)粉末を懸濁して光照射すると、溶存酸素の還元を伴いながら、有機物はCO_2にまで酸化分解できる。しかし、TiO_2の酸素還元力は弱く光触媒反応は速くない。 本研究では、有害有機物を高効率に光触媒分解することを目的に、1)光触媒への十分な酸素ガス供給、2)酸素ガス還元触媒能の付与、という条件を同時に満足する全く新しい光触媒反応場を構築した。 2.新しい酸化チタン光触媒膜の調製 Ti(i-OC_3H_7)_4の制御加水分解により、粒径が数nmのTiO_2超微粒子コロイドを調製した。導電性透明ガラス(ITO)上に電析したNi-PTFE電極と白金対極をこの溶液中に浸漬し、電気泳動析出法によりTiO_2/NiPTFE複合膜を調製した。さらに、金属触媒(Pt,Ni)微粒子を高分散担持したTiO_2とPTFE粒子と均一に配列させたPt-TiO_2-PTFE膜(改良型膜)も同様にして調製した。 3.新型光触媒膜によるトリクロロベンゼンの高効率分解 殺虫剤等に使用されているトリクロロベンゼン(TCB)を9ppm含む水溶液中に、種々の光触媒膜を浸漬して光照射し、分解により生成するCl^-,CO_2量の時間変化を測定した。まず、TiO_2/Ni-PTFE複合膜の各構成要素が設計概念通り機能することを光電気化学的測定により明らかにした。改良型膜において、TiO_2にPtを約2wt%担持することによりTCBからClを切断する活性を約10倍高めることができた。Pt-TiO_2に酸素供給ネットワークとしてのPTFEを10wt%添加することにより、CO_2への分解は大幅に加速でき、約2.5時間の光照射でTCBを完全分解できることが分かった。この新し光触媒膜による環境浄化の成果は学会発表において高い評価を受け、現在、論文投稿の準備とともに、さらなる高性能化のアプローチを進めている。
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