研究概要 |
本研究により得られた知見を総括すると以下の通りである。 1.MmNi_<4.2>Al_<0.5>M_<0.3>(Mm=misch metal, M=Cr,Mn,Fe,Co,Ni)合金において、Mの原子半径が大きいほど吸蔵水素の安定性が増大するため、合金中での水素拡散係数(Einsteinの拡散係数)は小さくなる。また、Mm(B_5)_x(B_5=Ni_<3.6>Mn_<0.4>Al_<0.3>Co_<0.7>,0.8≦x≦1.12)合金の水素電極反応はx値によらずVolmer-Tafel機構で進行するが、x値が増大するほどTafel反応が効果的に抑えられ、合金内への水素吸蔵は促進される。 2.パラジウム薄板の片面を水素発生反応のカソードとして用い、背面において活性水素によるスチレンからエチルベンゼンへの水素添加反応を行うと、エチルベンゼン生成量は、電解電流に依存する誘導期間の後、電解時間の経過につれて直線的に増大し、そのときの電流効率は90%を越える。また、エチルベンゼン生成速度は電流密度の増大につれて増加する。さらに、パラジウム薄板の代わりに超急冷法により作製した水素吸蔵合金板を用いる場合も同様の水素添加反応が進行する。 3.上記の水素添加反応システムは、α-メチルスチレン、1-オクテン、2-オクテン、シクロへキセンなどの液体不飽和有機化合物の水素添加反応にも適用でき、シクロへキセン<2-オクテン<α-メチルスチレン<1-オクテン<スチレンの順に水素添加反応速度は増大する。また、気体不飽和有機化合物であるアセチレンの水素添加反応も同様のシステムにより連続的に進行し、エチレンを経てエタンが生成する。 4.水素添加反応に対して高い触媒活性を示すパラジウム黒は、パラジウム薄板を透過した活性水素とパラジウムイオンとの反応により生成し、三次元的に成長する。パラジウム黒を修飾したパラジウム薄板電極を用いて4-メチルスチレンや2-オクテンの水素添加反応を行うと、修飾しない場合に比較して反応速度は飛躍的に増大する。
|